もう一度抱いて
聞き覚えのある声に、ドクンと心臓が音を立てる。


まさかと思い振り返るとそこには。


ついこの前、一夜を共にしたあの彼が立っていた。


その人は私の顔を見ると、一瞬顔を強張らせ、目を見開いた。


「トモオ君。こっちこっち」


そう言って、自分の席の隣に彼を誘導する京香。


私の真正面に、その人は腰掛けた。


「里桜、紹介するわ。
私の彼、磯村共生(いそむら ともお)君よ」


隣の席に座らせた時点で。


いや、ここに姿を現した時点ですぐにピンと来た。


彼は、京香の彼氏なんだってこと…。


「トモオ君。
前から話してた私の親友の里桜よ」


京香の言葉に、彼は私の顔をぎこちなく見つめた。


私は震える手をぎゅっと握りしめて、無理矢理口角を上げた。


「永瀬里桜(ながせ りお)です。
はじめまして…」


無意識に震えてしまう声を出せば。


「磯村です…。
はじめまして…」


目の前の彼は、ボソッと呟くように言った。

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