もう一度抱いて
「里桜は?
ゼミの先輩とは上手くいってるの?」


笑顔で問いかける京香に、キュッと胸が痛くなった。


「んー、実は別れたの」


そう言ってにんまり笑って見せた。


「えぇっ、いつ?」


「……つい最近よ」


「えー?結構長く付き合ってたでしょう?里桜が振ったの?」


うっ。


それ、答えないといけないのかな。


「いや……、私が振られたの」


京香は目をぱちくりさせて「そう…」と呟いた。


思わずため息が漏れた。


どうして彼の前で、こんなこと言わなくちゃいけないの?


あの日あんなに飲んでいたのは、彼氏に振られたからだってバレバレじゃないか。


その後、料理が運ばれて来たけど、なんだかちっともおいしく感じなかった。


彼はというと、私の目の前で以前と同様、綺麗にハンバーグを口に運んでいた。


食事をしながら、京香は楽しそうに彼に話しかける。


彼は終始無口だったけど、優しい顔で京香の話を聞いていた。


それを見ていたら、なぜか胸が疼くように痛んだ。
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