もう一度抱いて
どうして?


どうしてなんだろう。


もう少し早く。


たった一週間だけでよかったんだ。


あと一週間早く出会えていたら。


そしたら俺、絶対お前の手を取ったのに!


運命って残酷だと思った。


なんて言ったらいいかわからずに、


精一杯言葉を考えたけれど。


「ごめん」と「ありがとう」しか言えなかった。


彼女がいるのに。


そんな俺を好きになってくれて、ありがとうって…。


俺の前を歩く彼女の背中が、いつもより小さく小さく見えた。


抱きしめられたら、どんなにかいいのに。


それすら俺には、叶わない夢だった。

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