もう一度抱いて
その日は特に連絡はなかったんだけど、次の日の夜、その女の人からメールが入ったんだ。


『こんばんは。
朝田京香です。
この前のライブすごく良かったです。
良かったら今度、お茶でもしませんか?』


そう書かれていた。


思わずため息が漏れた。


お茶って言われてもなあ…。


でも無下に断って、小山が先輩から何か言われてもいけないし。


そう思った俺は、当たり障りのない言葉で遠まわしに断った。


すると意外とあっさり了承してくれて。


あぁ、良かったと思ったのも束の間。


彼女は事ある毎にメールを送って来るようになって、俺はかなり困惑していた。




一応毎回返信はしたけど、正直疲れて来ていた。


これは一度会って、きちんと言わないと面倒なことになるかもしれない。


そう思った俺は、彼女の誘いに乗って、一度だけ食事に行くことにした。


彼女が案内したのは、洒落たイタリアンのお店だった。


俺の目の前に座るその女性。


今までじっくり見たことはなくて、今日初めてハッキリ見た気がした。


長いウェーブの黒髪。


色白で、顔立ちはかなり整っていた。


スタイルも良く、相当モテるだろうなと思った。


そんな人がなんで俺なんかに興味があるのだろう。


俺は不思議でしょうがなかった。

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