もう一度抱いて
昔のことを思い出して涙ぐむ彼女を見ていたら、なんだかかわいそうになって来て。


俺は、もう絶対やるなよと言ったんだ。


そしたら彼女、それはわからないって言うんだ。


たまにそういう衝動に駆られることがあるんだとか。


それは主に、孤独を感じた時だと言っていた。


誰かがそばに居てくれれば大丈夫なんだけど、と。


不安そうにうつむく彼女を見ていたら、俺は死んだ姉貴のことを思い出していた。




俺の姉貴の死因。


言ってなかったけど、実は自殺だったんだ。


俺ね、全然気づいていなかったんだ。


あんなに仲良くて、色んな話を沢山していた姉貴だったのに。


いつも一緒にいたのに。


一番近くにいたのに。


見抜けなかったんだ。


姉貴が死にたくなるほど悩んでいたなんて。


前の日も、本当に普通だった。


いつものように明るい姉貴だったのに…。


俺は姉貴に何もしてあげられなかった罪悪感で、気が狂いそうだった…。

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