もう一度抱いて
なぜだかわからないけど、その時…。


姉貴と目の前にいる朝田京香が、不思議と重なって見えたんだ。


救ってやりたいって…。


なんか…そう思ってしまって。


だから俺、俺がそばにいるから、もうやるなって言ったんだ。


姉貴を救えなかった代わりに、コイツを救ってやろうって。


実際京香は、俺の姉貴に少し似ていた。


そんなこともあって俺は、京香と付き合うことを決めたんだ。


同情だと言われれば、確かにそうなんだと思う。


でもあの時は、アイツをどうにかしてやりたいって思ったんだよ。


だけど…。


まさかその一週間後に、こんなに好きになれる子が現れるなんて、思ってもみなかったんだ。


もしあの日に戻れるなら、俺は絶対にそんな選択はしない。


そんな選択はしないで、永瀬に会える日を楽しみに待って。


少しずつ恋に落ちて。


楽しいこと。


嬉しいこと。


一緒に味わって。


たまにケンカなんかもしながら。


お前と生きていきたいって…。


そう…思う。

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