もう一度抱いて
キョウセイの話を聞きながら、私は涙が止まらなかった。


キョウセイと私は、やっぱりどこか似ているのかもしれない。


京香に対して、同じ思いがあったんだ…。


確かにそんな思いで付き合い始めたのなら、キョウセイは京香と別れられるはずがない。


もし別れを言って、彼女がまたそんな行為をしたらって。


そう思うと、すごく怖かったに違いない。


知らなかった。


キョウセイがそんなつらい思いをしていたなんて…。


胸が痛くて、苦しくて。


どうにかなってしまいそうだった。


「キョウセイ…」


「ん?」


「私ね、キョウセイの気持ちが聞けたから、もうそれで充分だよ…。

好きって言ってもらえたから。

一番欲しかった、キョウセイの心がもらえたから…。

だから、もうそれでいい」


「永瀬…」


彼女という位置でなくてもいい。


あなたの心さえあれば。


キョウセイが、私を抱きしめる腕にぐっと力を込める。


その腕に、私は自分の両手をそっと置いた。


「俺の心は、永瀬だけのものだ…」


耳元で囁くキョウセイの言葉に、私は何度も頷いた。

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