もう一度抱いて
「おい、キョウセイ。

朝田さん、会社を無断欠勤してるのか?」


小山が椅子から立ち上がって、俺の近くに来た。


「あぁ…、そうらしい。携帯も通じないそうだ」


「携帯も通じへんのか。そらちょっと深刻やな…」


「様子を見に行ってくれって頼まれた。

俺、今から京香のマンションまで行って来るよ」


俺はむくっと壁から身体を起こした。


「なんやねん!あの人。

あっさり別れてくれたんが、妙やなと思ててん。

結局そうやって、心配かけな気が済まんのんやな」


拓真の声に怒りが感じられる。


俺だって憤りは感じてる。


だけど。


一度乗りかかった船だ。


無視するわけにはいかない。


「小山。ギター預かっておいてくれるか?」


「あ、あぁ。それはかまわないけど。
なんか、心配だよな…」


小山の言葉に、ふぅとため息をついた。


「大丈夫だと信じたいけどな」


ぽつり呟いた途端、身体がブルッと震えた。
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