もう一度抱いて
「磯村君って、そんなに気難しい人なの?」


亜美が興味津々に問いかける。


「あー、んー。

このバンドの作曲担当って、磯村なんだ。

アイツ音楽に関しては一切妥協しないから、ボーカルへの要求がどうしても厳しくなってしまうんだよ。

そうすると、ボーカルのヤツが気分悪くなって、歌う気失くしちゃったりするんだ」


ふぅん。


そういうものなのかな。


そんなことを話していたら、ガチャンと扉が開いて、噂の彼が中に入って来た。


「あれ…?」


私と亜美がいることに驚いている様子の磯村君。


「お邪魔してまーす」


亜美はニッコリ笑った。


私もペコリお辞儀をすると、磯村君は長い髪を揺らして、少し頭を下げた。


「キョウセイ、どないすんねん。

またボーカル辞めたやんかー」


相原君にそう言われて、磯村君はポリポリと頭を掻いている。


「ねぇ、ボーカル探してるんでしょう?」


突然の亜美の言葉に、みんながきょとんとして亜美を見た。


「ピッタリの人がいるわよ!」


みんなの動きがピタリと止まる。


「え…。誰?」


小山君が怪訝そうな顔をしている。


「ここにいるわよ!


里桜が!!」

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