もう一度抱いて
そっと指を絡め合う。


心を確かめ合うように。


ぎゅっと指に力を込める。


そのぬくもりを忘れないように。


しっかり、しっかり刻み込む。


震えるような深呼吸をするキョウセイ。


私は隣でその息遣いをただ聴いていた。




「愛してる…」




優しい声でそう呟くと、キョウセイは惜しむように、ゆっくりと手を離した。


その最後の1本の指が離れると、キョウセイはゆっくり病院へと歩き始めた。


自動扉が開き、振り向くことなく中へと入って行くキョウセイ。


そして、その姿はついに。




見えなくなってしまった…。
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