もう一度抱いて
「せやったら、もう朝田さんはほっといたらええやん。

あんなもん、お前を繋ぎ止めるための手段やろ?

そのたびに戻っとったら、お前ずっと朝田さんの奴隷やで?

身動きひとつ、取られへんようになる。

離れた方が身のためやで」


拓真が必死の形相で俺に訴える。


わかってる。


拓真が言いたいこと。


だけど。


だけど…。


「でも、京香が…。

姉貴みたいに死んだら、どうしたらいい…?

俺が止められたかもしれないのに、止められずに死なせたら、どうしたらいいんだよ…っ」


もうイヤだ。


誰かが死ぬのはイヤなんだ…。


「お前の言うてる意味がわからへん。姉貴ってなに?

キョウセイ、姉ちゃんがいてんの?」


拓真がきょとんと首を傾げる。


俺は、はぁと長い息を吐いた。


「俺の姉貴…。

俺が中3の時、自殺したんだ…」


「え…?」


「わかってるよ。

京香は姉貴じゃない。

救ってやりたいなんて思った俺は馬鹿だったって。

だけど、怖いんだよ…。

どうしようもなく、怖いんだよ…っ」


拳をぎゅっと握り締める。


その手は小刻みに震えていた。

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