もう一度抱いて
それでも里桜ちゃんは。


床に直接座って、俺の前でにっこり笑いながら、楽しそうに話しとる。


何もなかったかのように。


つらいなんて、悟られへんように。


またや…。


前もそうやった。


キョウセイに振られた日。


明るく振舞って、テンション上げて…。


いじらしいやんか。


俺はなんや泣きとうなってきた。


それを誤魔化すために明るく声をかけた。


「なぁ、里桜ちゃん。

久しぶりに、キーボード弾いてくれへん?」


「え~、どうしたの?」


「なんや、久しぶりに聴きたなってん」


「そか。いいよ」


そう言うと里桜ちゃんは、床からゆっくり立ち上がった。


その時やった。

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