もう一度抱いて
「なぁ、朝田さん。

今、幸せ?」


里桜ちゃんの笑顔を奪って…。


キョウセイのギターも奪って…。


愛し合ってる二人を引き裂いて、ほんまに幸せなんか?


俺には、さっぱりわからへん…。


彼女はカップをソーサーに戻すと、下を向いたまま静かに口を開いた。


「相原君がなんて言おうが、どう思っていようが、トモオ君は今は私と付き合ってるの。

いつもそばに居てくれてるし、すごく穏やかで幸せな毎日よ。

誰にも邪魔されたくない…」


朝田さんは俺の目は見ずに、少し震える声で言った。


「そんなん、ずっと続くってほんまに思てんの?」


ゆっくり、重い口調で聞いた。


「続くわよ…」


「どうやろな?」


「トモオ君が私を見捨てるはずない」


「なんで、そない言い切れんねや?」


「だって彼、優しいもの…」


「そらアイツは優しいやろな。せやけどそれってな、朝田さんに同情してんねんで。別に好きやから優しくしとんちゃうで」


俺がそう言うと、彼女はぎゅっと口をつぐんだ。
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