もう一度抱いて
「あの。そ、そんなこと言われても困るんですけど」


なんで急にこんなことになっちゃったわけ?


ワケがわからないよ。


「7月に5大学ジョイントライブを予定してるんだ。

このままじゃ出られない。

キミが必要だ」


うっ。


なんだか磯村君、今まで見た事がないくらい目力があるんですけどーーー。


困ってうろたえていると。


「キョウセイ、あかんて」


相原君が口を開いた。


「俺らのバンド、8割は女性ファンや。

せやのに、女性ボーカル置いたら、そのファンが減ってまう。

だいたい今まで書いた曲、全部男の歌詞やんか。

全部書き直さなアカンし、手間やん」


おーっ。相原君が反対してる。


いいぞ。もっと反対してー。


「せやから、里桜ちゃんはキーボードにしよなー」


おいおいおい。


だーかーら!


バンドはせぇへんって!!!


思わず、言葉がうつっちゃったじゃないの!


顔をギュッとしかめていたら、磯村君が口を開いた。


「小山はどう思う?

お前、リーダーだし。

お前の意見に従うよ」


「えっ?僕?」


そう言って、小山君が目を丸くした。

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