もう一度抱いて
京香がカレーと水の入ったグラスを運んで来て、俺の向かいに座る。


あの日以来、毎日続いている、いつもの光景だ。


「いただきまーす」


京香が両手を合わせて言った。


俺もいただきますと言って、カレーを口にした。


焦げた部分がちょっと苦くて。


なんだか、泣きそうになった。


「ねぇ、トモオ君」


「ん?」


「トモオ君は、自分のどんなところが好き?」


「は?何?突然」


いきなり変なこと聞くんだな。


「ちょっと聞いてみたくて」


「う…ん、そうだなあ…」


って、考えてみたけど。


この頃、自分のことが嫌いになっていた。


好きな人をあんな姿に変えてしまって…。


好きな音楽もやっていない自分なんて…。


こんな俺に、一体何が残るというのだろう…。


「わかんない…。

あんま、好きじゃないかも…」


ボソッと呟くように言うと、京香は少し悲しそうな目をした。
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