もう一度抱いて
「だけどね…。

どんなに頑張ったって、あの子のようにはなれなくて。

そのうち、そうなれない自分にイライラして、どんどん自分が嫌いになって、それにつれて里桜がなんだか憎くなって…。

なんか、一人でバカみたいだよね…」


涙ぐむ京香。


「会社で、何かあったのか?」


なんか、今日は様子がいつもと違うよな…。


「何もないけど…。

ただ…、ようやく気づいたの。

里桜と私は違う人間なんだから、私は私でいればよかったんだって。

誰かと比べるんじゃなくて、私らしく生きればよかったんだって。

そんな当たり前のことに、気づけなかったの。

もう、何年も…」


思わず、はぁと息を吐いた。


やっぱりそうだよな…。


本当の自分で生きてない時。


他の誰かを演じていたり、自分の心を偽ってる時。


人は、自分を嫌いになるんだな…。
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