もう一度抱いて
「トモオ君は私といても、全然笑ってくれなかったよね。

隣で寝ていても、一度も抱いてくれなかった。

キスしても、まるで人形とキスしているような気分だったわ…。

こんなに近くにいるのに、トモオ君の心はいつもどこか遠くにあって…。

正直…、すごく悲しかったわ…」


そう言って涙を流す京香に、チクリと胸が痛んだ。


「でも…。

それでもね、トモオ君さえそばに居てくれれば、それでいいと思ってたの。

たとえ愛されてなくても、ただそばにいてくれたらって…」


ひどく、やるせない気持ちになってしまう。


なんだか一生埋められないような深い穴を前にしている気分だ。


「だけど…ね。

愛してなかったのは、どうやら私も同じだったみたい…」


「え…?」


どういう…意味だ?


「私はトモオ君を愛してたんじゃなくて、ただ、寂しい自分を紛らわしたかっただけみたい…。

孤独がイヤだから…。

誰でも良かったの…。

見た目が好みで、優しい人なら誰でも…」
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