もう一度抱いて
「実はね…、昔。

同じ方法で、友達の恋人を奪ったことがあるの…。

同情させて、少しずつ関心を私に向けさせて…」


「もうやめろよ…、そんな話…」


やめてくれ。


聞きたくない…。


「確かに、中学の時のあの出来事は、死にたいくらい苦しいことだった。

だけどね、いつの間にか私。

自分のその傷を、利用するようになってた。

人の気を引きたくて…。

私ってそういう人間なの。

今回、手首を切ったのもね…。

トモオ君を、里桜から取り戻したかったから、わざとやったの…。

ごめんなさい…。

本当に…。

ごめんなさい…」


そう言って、頭を下げる京香。


俺は気がつけば、


頬に涙が流れていた。
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