もう一度抱いて
そう言えば私、磯村君がギターを弾く姿を初めて見るかも。


なんか…すごい。


ギターの事はよくわからないけれど、磯村君の演奏は、私には凄く上手に聴こえた。


最初は少し戸惑ったけれど、磯村君が真剣に弾いてくれるから、私も真剣に歌った。


小さな部屋に、磯村君のギターと、私の歌声が控え目ながらも美しく響き渡る。


私は歌いながら、時折磯村君の姿を盗み見ていた。


サイドの長い髪のせいで、顔はかなり隠れているけれど、チラリ見える高い鼻と形の良い唇がやけにセクシーだ。


コードを押さえる左手も、ピックを持つ右手の動きも、すべてが完璧なまでに美しい。


彼に一目惚れした京香の気持ちが、何となくわかる気がした。


京香…か。


彼女の顔を思い出した途端、急に私の胸がチクリと痛み、鼻の奥がツンとしてしまった。


歌っている歌詞が、あの時の記憶とリンクする。


心臓がバクバクする。


どうしよう。


苦しい…。


いけない…。


泣きそうだ…。

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