もう一度抱いて
「そのたびに悲しい思い出も、ちょっとずつ癒えて来た気がする。

そういう意味じゃ、オリジナルの音楽を作るのも悪くないだろう?」


磯村君がニッコリ笑うから、私もつられて笑った。


「つらい時は寄り添ってやるからさ。
だから、これからも一緒に音楽作らないか…?」


サラサラの長い前髪の隙間から、磯村君が真っ直ぐな瞳で私を見つめている。


「……うん。そうする」


バンドに入ってまだ一週間も経ってないけれど、なんだかすごく達成感があったし、私って案外こういう作業が嫌いじゃないのかもしれない。


それより何より…。


「なぁ」


「ん?」


「キョウセイでいいよ」


「え…?」


「仲間はみんなそう呼ぶから…」


仲間?


そうか…。


私、バンドのメンバーなんだ。


京香のように、“トモオ君”とは呼べないけれど。


「……キョウセイ」


「おう」


仲間ではいられる。


それでもいい。


あなたのそばにいられるのなら。


私、頑張るから。


だからずっと。


近くに置いて……。

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