もう一度抱いて
「とりあえず、ライブ中はアイツの姿が見えなくて良かったよ…」


キョウセイは私がちゃんと歌えるようにするために、京香に教えていなかったんだね。


自分の彼女なのに…。


本当は自分が出ているライブを、見に来て欲しかっただろうに…。


「ごめんね…」


「ん…?」


「気を遣わせてしまって…」


私の言葉に、キョウセイは首を横に振った。


「いいんだ。ライブを成功させるためだから…」


小山君が言ってたっけ。


キョウセイは音楽に対して、一切妥協しないって…。


メンバーだから。


仲間だから。


こうして私の心を大切にしてくれているんだね。


「永瀬」


「ん?」


「良かったよ」


「え?」


「歌、すげぇよかった」


優しく笑うキョウセイに、私の胸がキュンと音を立てた。


「ねぇ」


恋人でなくても…。


「ん?」


たとえキスをしたり、身体を触れ合えなくても…。


「これからも私、バンド続けていい…?」


あなたに大切にしてもらえるのなら。


仲間でいられるのなら。


たとえ、不純な動機だとしても。




「もちろんだ」




あなたのそばにいたいから…。
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