背中越しの春だった
……そして私は、見事にびんぼうクジを引き当てたのだった。


「それじゃ、クラス委員は槙野さんということで……よろしくお願いします」


城田先生に弱々しく、頑張ってねと声をかけられ、私は曖昧にうなずく。


肝心なところでツイてないのは知ってたけど、ここまで運が悪いとは……!

自分で自分の不運っぷりに腹が立つ。

大きくため息をついて机にへたりこむと、藤がおかしそうに笑いながら私を振り返った。


「自分でクジ作っといてさぁ……不正するならまだしも、当てるか? ふつー」

「わざと引くわけないでしょ!」


思わずムキになって言い返すと、藤はいっそう楽しそうに笑った。


「どんだけ運悪いんだよ、槙野」


肩をすくめるように笑う藤は、確かに可愛かった。

前髪が長くて、そのあいだからのぞく黒い瞳は、しっとり水をたたえてキラキラ輝いている。
口元も可愛くて、前歯がリスみたいだ。


私は藤みたいなタイプが特に好きなわけではないんだけど……。


この笑顔にはちょっと、弱いかもしれない、とこっそり思った。
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