背中越しの春だった
クラス委員としての初仕事は、春休みの課題の回収というあまりおもしろくない仕事だった。
「それじゃ、数学の課題は今日までなんで。昼休みまでに、私のところに持ってきてください」
教壇に立って言うと、一気に「めんどくせー」コールが起きる。
「課題とかありえねーよ」
「明日じゃダメ?」
「言っとくけど、数学の城田さんは担任でもあるんだからね。
居心地悪い一年間を送りたくなかったら、絶対提出してください」
私のオドシがきいたのかどうかはともかく、一応進学校なだけあって、
昼休みにはきちんと全員が課題を提出してくれた。
なんだかんだ言って、みんな不真面目なポーズをとりたいだけで、ちゃんと勉強してるのだ。
――藤をのぞいては。
昼休みが終わっても、藤はとうとう課題を持ってこなかった。
私は前の席の、小さな背中をつつく。
「ん?」
「藤、課題は?」
「……課題?」
不思議そうな顔をする藤に、思わず肩の力が抜けそうになる。
「だから、数学の! 春休みの課題だよ。朝言ったでしょ。今日までに提出って」
「あー、そんなものあったっけ」
藤はバックをかきまわして、課題ノートを取りだす。
なんだ、ちゃんとやってあるんじゃんと思ってノートをめくると、それは見事に白紙だった。
「……ちょっと! 全然やってないじゃん!」
「えへへ、うっかり忘れてた」
「うっかりってレベルじゃないでしょ、これ」
「放課後までにはやるよ」
そう簡単に言って、藤は屈託なく笑った。
「怒んなよ、マッキー」
「人を油性ペンみたいなあだ名で呼ばないでくれる?」
ケラケラ笑う藤に、私は呆れるしかなかった。
スゴイ奴だと思ったら、思いっきりいい加減な奴でもある。
藤って、思った以上によくわかんないヤツだ。
「それじゃ、数学の課題は今日までなんで。昼休みまでに、私のところに持ってきてください」
教壇に立って言うと、一気に「めんどくせー」コールが起きる。
「課題とかありえねーよ」
「明日じゃダメ?」
「言っとくけど、数学の城田さんは担任でもあるんだからね。
居心地悪い一年間を送りたくなかったら、絶対提出してください」
私のオドシがきいたのかどうかはともかく、一応進学校なだけあって、
昼休みにはきちんと全員が課題を提出してくれた。
なんだかんだ言って、みんな不真面目なポーズをとりたいだけで、ちゃんと勉強してるのだ。
――藤をのぞいては。
昼休みが終わっても、藤はとうとう課題を持ってこなかった。
私は前の席の、小さな背中をつつく。
「ん?」
「藤、課題は?」
「……課題?」
不思議そうな顔をする藤に、思わず肩の力が抜けそうになる。
「だから、数学の! 春休みの課題だよ。朝言ったでしょ。今日までに提出って」
「あー、そんなものあったっけ」
藤はバックをかきまわして、課題ノートを取りだす。
なんだ、ちゃんとやってあるんじゃんと思ってノートをめくると、それは見事に白紙だった。
「……ちょっと! 全然やってないじゃん!」
「えへへ、うっかり忘れてた」
「うっかりってレベルじゃないでしょ、これ」
「放課後までにはやるよ」
そう簡単に言って、藤は屈託なく笑った。
「怒んなよ、マッキー」
「人を油性ペンみたいなあだ名で呼ばないでくれる?」
ケラケラ笑う藤に、私は呆れるしかなかった。
スゴイ奴だと思ったら、思いっきりいい加減な奴でもある。
藤って、思った以上によくわかんないヤツだ。