背中越しの春だった
放課後、そろそろ城田さんのところに課題を持って行くか、

と立ち上がったところで、藤がぱっと振り返った。


「ちょーっと待った、マッキー! もうすぐ終わるから!」


あと三ページ、と藤は私の机の上にノートを置いてみせる。

確かに課題ノートは、三ページを残して全部回答が埋められていた。

私はかなりおどろいて、そのノートをめくる。


「ほんとに今日中にやる気なんだ……」


おう、やるよ、と相変わらず藤は何でもないように簡単に言う。

そして私の机の上で、あらためて問題を解き始めた。

私は黙って、それを見守る。


教室からはだんだんと皆が帰って行って、

美雪も何か言いたそうな顔をして私と藤を見比べるようにしていたけれど、

やがて手を振って帰ってしまった。


残されたのは、私たち二人だけ。
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