背中越しの春だった
私はホチキスの手を止めて、大きく伸びをした。


ふと窓の外に目をやると、サッカー部がグラウンドで練習している。

ほんとに珍しく練習熱心な部活動だ。

感心しながら眺めていると、やっぱり、山本の姿をすぐ見つけることができた。

素人目にも動きが軽いし、すらっと背が高くて、

コートを走り回る部員たちにまぎれていても、すぐ彼だとわかる。


こうして見るとやっぱり山本は目立つし、つい藤の付属物みたいに見ちゃうんだけど、

普通以上にカッコイイんだよね。


窓の外の山本は、屈託なく笑ってボールを追い、走り回っている。

私はプリントの前に頬杖をつき、ため息を漏らした。


やっぱり、どうしても思ってしまう。

藤のそばにいられたら……山本一平になれたらいいのに、って。
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