背中越しの春だった
木曜日の夜、夕食の後にいつものようにソファに座って、

だらだらとテレビを見ていたときだった。

藤からメールが来たのは。


つまらないクイズ番組にうんざりしていたところだったので、

私は携帯の着信音がなるとすぐにメールを確認した。

そして、その送信者名に「藤春輝」という名前が表示されているのを見て、

思わずソファからずり落ちそうになったのだった。

藤のメールは簡潔だった。


『予約取れたよ~。一人二千五百円でいけた!!』


その短いメールを、私は幾度となく読み返した。

……本当に、メールくれたんだ。

その事実だけでもう胸がいっぱいになって、ろくに内容が頭に入らない。

私は必死で自分を落ち着かせて、メールの返信を考えた。

何度打っても、メールは不必要に長く、不自然になってしまう。


『メールありがとう(^_^) 予約の件もありがとね、藤♪

すごく助かったよ(>_<) 藤がいてくれなかったら絶対みんな来てくれなかったよ!

しかも二千五百円って超やすいね(*。*) みんなよろこぶよ~!

楽しいクラスコンパになるといいね☆』


「……って長すぎだろ!」


思わず自分で突っ込みを入れながら打ったばかりのメール文を削除していると、

風呂上がりの弟が思いきり不審げな目で見てきた。


「……ねーちゃん、なに携帯片手にアワアワしてんの。キモチワルイ」

「ちょっとそっとしといて、今は!」
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