背中越しの春だった
最近にょきにょき背が伸びてきた中学三年生の弟は、

身長に比例するようにどんどん生意気になっている。

いつもなら姉の威厳を保つために売られた口ゲンカは買うようにしているけど、

今日ばかりはさすがにそんな余裕もない。


結局三十分もかかって、ようやく私はメールを返信した。


『了解、どうもありがとう♪ 助かりました! 一年間いいクラスになるといいね(*^_^*)』


さんざんためらってから送信ボタンを押し終わったときには、

私はすっかり気力・体力を使い果たしていた。


恋って、疲れる……。

メールひとつ返すのに、こんなに時間と体力を使うなんて。


私は大きくため息をついて、赤くなった頬を両手で挟みながらソファに倒れこんだ。

藤は、返信をくれるだろうか。

そんなことを考え出すと、ようやく冷えてきた頬がまたカッと熱くなる。


ソファの上で悶々としている私に、

ほんとキモイんだけど、と弟が去りがけに冷たい言葉をかけていった。
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