背中越しの春だった
藤の答えは、きっぱりしたものだった。


「あ、それはない。俺、自分から好きにならないと絶対ムリ」


それにさ、と藤は真剣な表情で続ける。


「そうゆうのって、お互いの気持ちをだんだん縮めていくものじゃん。

俺の気持ちは無視でイキナリ告白とかされたら、もう友達にもなれないな。俺の場合」


一瞬にして思いっきり落ち込む女子たちを尻目に、男子は一気に盛り上がって、

オマエのそうゆうところが好きなんだ!!と藤に抱きつき、

モテない男たちの本音を晒していた。


「やっぱ恋愛は告白されればいいってもんじゃないよな! そのとおりだよ、藤!」

「って、おまえ告白されたことなんてねーだろ!」

「うるせぇな、男はやっぱりストイックだよ、ストイック」


男子たちに頭をなでられ笑っている藤の横顔を盗み見て、私は少し複雑な気分だった。


今、藤はものすごいケンセイをしたんだと思う。

俺に告白とかめんどくさいことすんなよ、

そんなことしたら友達にもなれないからな、って。


少なくとも、妙にきっぱりした藤の横顔を見ていると、私にはそう感じられた。

藤は、恋愛とか女の子とか、そうゆうものから、

できるだけ距離を置こうとしているんじゃないだろうか。
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