背中越しの春だった
複雑な気分でそれを見守っていると、ふいに石本さんがくるっとこっちを振り返った。


「で、槙野さんは!」

「え?」

「槙野さん、実は結構藤と仲いいよね?」

「マッキーとか、あだ名で呼ばれてるし!」


一気に矛先がこっちに向き、ハデな女子たちにいきおいよく問い詰められて、私は軽くため息をついた。

美雪が、真剣な目で私を見つめている。

私はごく冷静に、それを否定した。


「いや、私はナイわ」


私の簡潔な否定に、石本さんたちはあっさり納得した。


「あー。分かれるよね。藤にときめくタイプと、全然わからんってタイプ」

「藤、思いっきりカワイイ系だもんね」

「男らしさを求めるタイプには絶対わからないよねぇ、藤の魅力は」


石本さんたちの話題はあっさりと私から逸れていき、私はあらためて小さく息をつく。

美雪はちらっと私を見て、へへっと笑って見せた。

私はとても悲しい気持ちで、笑い返した。


そう。


私は思わ「ナイ」。

藤と付き合いたいなんて……絶対思わない。
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