背中越しの春だった
9、夏
体育館は熱気に満ちている。
夏のむわっとする熱気。
バスケットボールを追いかける、男子たちの熱気。
そして、それに声援を送る、女子たちの熱気。
「藤ーッ!! がんばれぇ!!」
「B組ファイトー!!」
「藤くんカワイイ~っ」
女子たちの黄色い声援が飛ぶ。
それにこたえるかのように、ボールを受け取った藤はゴール下に切り込もうとして……相手チームのディフェンスに阻まれ、あっさり吹っ飛ばされた。
きゃーっと甲高い悲鳴があがる。
私はそっとため息をつく。
柿坂高校スポーツ大会最終日。
我が二年B組の男子バスケチームは、見事に大敗した。
試合後、私は藤を探して体育館裏へ向かい、水飲み場で一人水を飲んでいる藤を見つけた。
汗に濡れた前髪を額に張り付かせ、藤はごくごく喉を鳴らして水を飲んでいる。
水飲み場は木陰になっていて、涼しい風が吹いていた。
体育館の中から、歓声とボールの音が聞こえる。
藤は私に気づくと、水を止めて顔をあげ、ふっと笑った。
まだ頬が赤く上気していて、濡れた唇が艶めき、ドキッとする。
夏のむわっとする熱気。
バスケットボールを追いかける、男子たちの熱気。
そして、それに声援を送る、女子たちの熱気。
「藤ーッ!! がんばれぇ!!」
「B組ファイトー!!」
「藤くんカワイイ~っ」
女子たちの黄色い声援が飛ぶ。
それにこたえるかのように、ボールを受け取った藤はゴール下に切り込もうとして……相手チームのディフェンスに阻まれ、あっさり吹っ飛ばされた。
きゃーっと甲高い悲鳴があがる。
私はそっとため息をつく。
柿坂高校スポーツ大会最終日。
我が二年B組の男子バスケチームは、見事に大敗した。
試合後、私は藤を探して体育館裏へ向かい、水飲み場で一人水を飲んでいる藤を見つけた。
汗に濡れた前髪を額に張り付かせ、藤はごくごく喉を鳴らして水を飲んでいる。
水飲み場は木陰になっていて、涼しい風が吹いていた。
体育館の中から、歓声とボールの音が聞こえる。
藤は私に気づくと、水を止めて顔をあげ、ふっと笑った。
まだ頬が赤く上気していて、濡れた唇が艶めき、ドキッとする。