背中越しの春だった
「……というわけで、八月のお盆前に花火大会をやりたいと思うんですが」


なんだかこんなシーンが、ついこのあいだもあった気がすると思いつつ、

私はホームルームの後で花火大会の話を持ち出した。

前回と大きく違った点といえば、異常に協力的な女子たちによって、

すんなり話がまとまったことだろう。

藤の助けを借りるまでもなく、私のもとへ戻ってきた出欠名簿は、全員分マルがついていた。


とりあえず花火を買い出して、花火しても怒られない広い場所を探さないとな……と、

面倒な段取りを考えため息をつきながら帰り支度をしていると、

藤が意外そうな顔で私を振り返った。


「マッキーって案外イベント好き? 自分から言い出すとは思わなかったなぁ」

「……スポーツ大会、全学年でビリじゃなかったことをちゃんと祝わないとね」


力なく答えると、藤はちょっと笑って肩をすくめて見せる。


「なにも夏休みまで“クラス委員”することないのに。ホント人がいいよなぁ」


じゃあね、とカバンを持って立ち上がった藤の背中を見送って、私はもう一度ため息をつく。


そりゃ、私だってやっぱり……会いたいんだよ。

あんたに。
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