背中越しの春だった
校門を入って昇降口まで来ると、真新しいクラス表が貼られた掲示板の前に、

騒々しい人垣ができていた。


私は自分の名前を探して遠慮なく人をかきわけたり、

背伸びをしたりして掲示板をみつめる。


なんとか人の頭と頭の間から、二年B組の欄に「槙野依子」という自分の名前を見つけたところで、

友人の小川美雪に肩をたたかれた。


「おはよ、依子ちゃん」

「お、美雪ちゃん」

「同じクラスだよ、私たち」

「ほんとに? よかった」


一年でも同じクラスだった美雪は、ゆるく巻いた栗色の髪が似合っている、

色白のなかなか可愛らしい女の子だ。


穏やかで柔らかい雰囲気の割にちゃっかりした性格で、

そうゆうとこがちょっと気に入っている。
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