背中越しの春だった
夏休みはゆっくりと過ぎて行った。


私は何度かバドミントン部の練習というか、

練習という名の遊びに参加し、

美雪と夏祭りに行き、

中学時代の友人とディズニーランドに行き、

家族でおじいちゃんの家に帰省した。


アイスも一年分食べたし、

そうめんもほぼ毎日食べたし、

お祭りではリンゴ飴も食べたし、

いつもどおりの夏休み。


そしてとうとう、明日は花火大会だ。

クラスの有志と買いだした大量の花火、

バケツやライターなどの用意を終えて、準備は万端だ。


その日の夜、私はさんざん迷ってから藤にメールを送った。


『藤!! 明日は花火大会だよ♪

七時に公園だからね。ちゃんとおぼえてる?』


送ってから一時間くらい、私はずっとそのメールを後悔し、

ベッドの上でバタバタ暴れていた。

自分からメールしたくせに、やっぱりやめればよかった……という後悔が、

胸をしめつける。

今、自分のマヌケなメールを藤がどこかで読んでいるかと思うと、

恥ずかしくて叫びだしたくなる。

そのくせ、藤からの返信を、きっと私は何時間でも待ち続けるんだろう。


藤に何も期待なんかしていないのに。

何も求めていないのに。

私はムジュンしてる。


しばらくして、返信がきた。


『おぼえてるよ!! クラス委員様』


くすっと笑みが漏れる。

私はその文字を何度も目で追ってから、ケイタイを閉じた。

そして、ベッドに大きく倒れこむ。

胸の中は甘いのに、奇妙に苦々しい気分だった。


もう二度と、こんなバカなまねはしない。

クラス委員の立場を利用して、自己満足のメールなんか、もう絶対しない。
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