背中越しの春だった
花火大会の日、藤はちょっと遅れて、

山本一平のスクーターに乗って現れた。


ちょっとずつ手持ち花火を始めていたところで、

そこへ大きなスクーターが登場し、

ヘルメットをかぶった藤が笑顔で地面に降りて、一気にその場が盛り上がる。


山本は黒の薄いニットにダメージジーンズ、

藤は白いTシャツにピンク系チェックのパンツという格好で、

まるで双子みたいにそれぞれよく似合っていた。


「藤、おせーよっ!」

「もう始めてるぞ」


友人たちに声をかけられて、藤はごめんごめんと笑う。


「てか、なんで違うクラスの山本まで来るんだよ」


男子の一人から突っ込まれ、一人くらいいいだろ、と山本は余裕でかわす。

私に気づくと、藤はにこっと笑いかけてきた。

その笑顔に、なんだか微妙な距離を感じた。


「マッキー、俺にも花火ちょうだい」


駆け寄ってきた藤に花火を渡して、私は周囲を見回し、

誰もこっちに注目していないのを確認してから、小さく謝った。


「あー……藤。ごめん」

「何が?」

「子供扱いしすぎた。ま、メールしても遅刻するんじゃ、どっちにしろ意味ないか」


私の言葉に、なにそれ、と藤はおかしそうに笑った。

てゆーか遅刻すんな、と言い返しながらも、

私に向けられた藤の笑顔の屈託のなさに、ひそかにホッとしていた。

もうこんなふうに笑いかけてももらえないくらい、

バカなことをしたかも、と後悔していたのだ。


その様子を、少し離れたところから山本が黙って見ているのがわかって、

ちょっと居心地悪かった。
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