背中越しの春だった
そして初日からさっそく、
私は夏休みの課題提出の仕事を与えられたわけで。
夏休みボケでぼんやりしたクラスメイトたちを追い立てて課題を集め、
職員室へと向かう廊下を三十人分の重たいノートを抱えて歩いていると、
やっぱりずっと夏休みでもよかったかも……なんて、今更ながら思えてきたり。
城田さんにノートを渡すと、
今学期もよろしくお願いします、と力なく笑いかけられた。
「槙野さんには、お世話になっています」
そう思うなら少し仕事減らせよ、と思いつつ、
ちょっと嬉しかった。
職員室を出たところへ、ばったり藤がやってきた。
「おーマッキー、ナイスタイミング」
「は?」
「海行くぞー、うみ!!」
まったく事情の呑み込めない私の首に腕を回し、
藤は楽しげに歩きだす。
私は動揺のあまり一切抵抗できずに、
ずるずると校舎の外へ引きずられていく。
「ちょ、ちょっと藤、なんなの一体!」
「だからさぁ、さっき石本たちが海の話してたじゃん。
そんで強烈に海に行きたくなっちゃってさー」
でも一平のやつは部活あんだよ、と藤は口をとがらせる。
「二人で行っちゃおうぜ、あんなサッカー馬鹿はおいて」
そう言って、藤はスクーターのキーを私の目の前にぶら下げた。
銀色の鍵が、キラリと太陽の光を反射する。
思わず顔をあげると、
いつの間にか山本のスクーターが止めてある校舎裏に来ていた。
一平のパクッてきちゃった、と藤がいたずらっぽく笑う。
「いーの!?」
「いーの、いーの。あ、俺免許的なもの持ってないからキチッとメットかぶってよ」
つかまりたくないからねーと、
藤はのんきに私の頭にヘルメットをつけた。
私は夏休みの課題提出の仕事を与えられたわけで。
夏休みボケでぼんやりしたクラスメイトたちを追い立てて課題を集め、
職員室へと向かう廊下を三十人分の重たいノートを抱えて歩いていると、
やっぱりずっと夏休みでもよかったかも……なんて、今更ながら思えてきたり。
城田さんにノートを渡すと、
今学期もよろしくお願いします、と力なく笑いかけられた。
「槙野さんには、お世話になっています」
そう思うなら少し仕事減らせよ、と思いつつ、
ちょっと嬉しかった。
職員室を出たところへ、ばったり藤がやってきた。
「おーマッキー、ナイスタイミング」
「は?」
「海行くぞー、うみ!!」
まったく事情の呑み込めない私の首に腕を回し、
藤は楽しげに歩きだす。
私は動揺のあまり一切抵抗できずに、
ずるずると校舎の外へ引きずられていく。
「ちょ、ちょっと藤、なんなの一体!」
「だからさぁ、さっき石本たちが海の話してたじゃん。
そんで強烈に海に行きたくなっちゃってさー」
でも一平のやつは部活あんだよ、と藤は口をとがらせる。
「二人で行っちゃおうぜ、あんなサッカー馬鹿はおいて」
そう言って、藤はスクーターのキーを私の目の前にぶら下げた。
銀色の鍵が、キラリと太陽の光を反射する。
思わず顔をあげると、
いつの間にか山本のスクーターが止めてある校舎裏に来ていた。
一平のパクッてきちゃった、と藤がいたずらっぽく笑う。
「いーの!?」
「いーの、いーの。あ、俺免許的なもの持ってないからキチッとメットかぶってよ」
つかまりたくないからねーと、
藤はのんきに私の頭にヘルメットをつけた。