背中越しの春だった
波の中でもつれあって、
はしゃぎ疲れた私たちは砂浜にあがり、
コンクリートの防波堤の影で、
干してあるワカメと並んで横になった。
ひなたの焼けるほど熱い砂とは対照的に、
背中の砂は日陰でひんやり冷やされていて、
気持ちイイ。
波の音だけが、静かに聞こえる。
さっきまでのバカ騒ぎがウソのように、
静寂が満ちている。
濡れた髪やスカートが、
私の呼吸に合わせて動く。
真っ青な空が痛いほど眩しくて、
私は目を閉じた。
「……なんか……ワカメの気持ちになる」
「わかる、それ」
隣で藤がちょっとだけ笑う。
「俺、女の子と二人で海とか、初めてなんだけど」
「私だって……初めてだよ」
再び、静寂が訪れた。
心地よい風が吹く。
まるで、
世界にたった二人きりで取り残されてしまったみたいだ。
誰の存在も感じられない。
とても静か。
ただ隣にいる藤の呼吸だけが、
確かに感じられる。
それは真夏の隙間の、
真空パックのような空間で、
確かに時間が止まっていた。
そっと隣に顔を向けると、
藤は眠っているのか、
目を閉じて安らかな吐息を立てていた。
私はじっと、その横顔を見つめる。
閉じられた長いまつ毛が、
頬にやわらかな影を落としている。
はしゃぎ疲れた私たちは砂浜にあがり、
コンクリートの防波堤の影で、
干してあるワカメと並んで横になった。
ひなたの焼けるほど熱い砂とは対照的に、
背中の砂は日陰でひんやり冷やされていて、
気持ちイイ。
波の音だけが、静かに聞こえる。
さっきまでのバカ騒ぎがウソのように、
静寂が満ちている。
濡れた髪やスカートが、
私の呼吸に合わせて動く。
真っ青な空が痛いほど眩しくて、
私は目を閉じた。
「……なんか……ワカメの気持ちになる」
「わかる、それ」
隣で藤がちょっとだけ笑う。
「俺、女の子と二人で海とか、初めてなんだけど」
「私だって……初めてだよ」
再び、静寂が訪れた。
心地よい風が吹く。
まるで、
世界にたった二人きりで取り残されてしまったみたいだ。
誰の存在も感じられない。
とても静か。
ただ隣にいる藤の呼吸だけが、
確かに感じられる。
それは真夏の隙間の、
真空パックのような空間で、
確かに時間が止まっていた。
そっと隣に顔を向けると、
藤は眠っているのか、
目を閉じて安らかな吐息を立てていた。
私はじっと、その横顔を見つめる。
閉じられた長いまつ毛が、
頬にやわらかな影を落としている。