背中越しの春だった
2、貧乏クジ
出席番号が前後ということで、必然的に私と藤は前後の席になった。

そして私はずっと、藤の背中を見つめることになる。


だけど正直な話、藤の後ろの席に初めて座ることになったその日、

私はかなり憂鬱な気分でその小さな背中を眺めていた。


藤の席の周囲はいつも派手な生徒たちに囲まれていて……とにかく、うるさかったのだ。


「B組の担任って誰だっけ?」

「数学の城田さん。マジついてなくね?」

「ないわー!! 城田さんってあの顔で、子供五人もいるんでしょ?」

「あの不幸顔で精子濃いのかよ。引くわー」

「でも胃腸弱いんでしょ? よく保健室で漢方もらってるってウワサ」


くだらない会話でふざけるのはいいんだけど、ちょっと下品すぎるのよ、内容が!

ついでに言うと、この集団は声も大きい。


とりあえず当分は静かな環境は望めないな、と私はうんざりしながら、

見るともなしにシャツにかかる藤のえり足を見つめていた。


黒いままの細い髪は柔らかそうで、首筋は折れそうなほど細く、頼りなく思えた。
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