【短編】こちら、なんでも屋でございます。


結婚生活は最悪だった。
俺はとっくに真琴さんのいいなりだった。
反抗したりでもしたら真由子が傷つけられる。
「ねぇ、雄一さん。」
「…」
「ねぇ…」
「…」
「ねぇって言ってるでしょう!?」
バチンッ!
「ご、ごめん…少し考え事を」
「真由子の事?信じられない!!貴方の前にいるのは誰!?大谷真琴でしょう!?私だけを見てよ!!ねぇ!!」
家庭内暴力は当たり前だった。
内出血の跡は日々に増えていき、俺の体はボロボロだった。
次第には俺の腕を刃物で切る事もしばしばあった。
「うふふっ…雄一さんの真っ赤な血をみると落ち着くの…不思議よね…」
「あっ…!くっ…」
「苦痛に歪むその顔…たまらないわ」
腕には無数の切り傷。
俺の心はもう限界だった。

その時、真由子から連絡が入った。
『会いたい』
俺はすぐに足を運んだ。
真由子の足は回復し、依然と変わらず普通に歩いていた。
その姿を見た瞬間俺は力が抜け、真由子にすがりついた。
「ごめんなっ…真由子っ」
「いいの…雄一さんは何も悪くないわ…悪いのは真琴よ」
「…っ」
「これからは…会える?」
「あぁ、真琴さんの目を盗んでなるべく会うようにするよ」
「そう…ありがとう」



こうして、俺の不倫生活は始まった。
なるべく行動を悟られないようにした。



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