ぼくらのうた
振りほどけないよ…っ!
「やだ…っ」
助けて、なお…春樹!!
ぎゅっと目を瞑って、祈った瞬間――
「オーイ、何してんの?」
「…は?」
ナンパ男の前に立つ、黒パーカーの男。
顔はフードを被っててわからない。
けどそいつが進行方向にいるおかげで、引っ張られなくなった。
「お前には関係ねぇだろ」
「それがあるんだな〜この子、」
そう言いつつあたしの肩に腕をまわす。
は…何!?
「俺の彼女だからっ☆」
「…チッ」
黒パーカーの男のおかげで、ナンパ男は消えた。
でも、肩にある手は変わらない。
「手、離してよッ」
「あぁ、ごめんごめん!」
フードを元に戻して茶色い前髪を掻き分けて、笑顔を見せる。
あ…れ?
じっと、お互いを見た。