ぼくらのうた



 2人でお母さんを待った。

 寂しいときも悲しいときも、嬉しいときも…この家にはたくさんの思い出がある。

 なおにぃが生きてきた証なのにっ!


「藍架…もう、いいのよ」

「いいって何が?!」


 忘れちゃいけない。

 あなたを、忘れてはいけない。

 他の誰かが忘れたとしても、あたしだけは覚えてなきゃいけない。

 あたしだけは…!!


「藍架!!!!…もう、いいの。
 直樹が死んだのは藍架のせいじゃない。
 もう忘れ…」

「忘れない!!忘れたい、けど、忘れちゃいけないんだよ!!
 だって…だってあたしがッ」


 〜…言葉が続かない。

 あたしは逃げるように2階へ行った。


「藍架ッ!」


 勢いよくドアを閉める。

 視界に入るナオ。


「…ナオ、どうしよう…ッ」


 焦りや苦しさが襲ってくる。



< 210 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop