ぼくらのうた



 あたし、春樹を好きにって、なおにぃのこと忘れてた。

 忘れちゃいけないのに…!!

 そんなあたしを放って、時間は進んでいく…。







―――――







 結局あたしは相手の顔も知らないまま、お母さんは結婚してしまった。

 そして今日、初めて、再婚相手に会う。

 話を聞く限りでは、悪い人ではなさそう。

 だから…あたしは、1つの決意と共にレストランのドアを閉めた。

 視線はずっと爪先。

 大丈夫…大丈夫、


「藍架…愛想良く、お行儀良くね?」

「…ん」


 あたしは今からその正反対のことをする。

 ごめんね?お母さん。

 でもあたしは、あの家から離れたくないの。


「紅子(コウコ)さん」


 よく耳に通る声。

 この人が、あたしのお父さんになる人…。

 ゆっくりと視線を上げた。



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