ぼくらのうた



 でもあたしは…なおにぃを忘れることなんて、できないっ。



「じゃあ家はうちで…」


 その言葉に、立ち上がった。

 嫌われてもいいよ、でもこれだけは譲れないの。


「お願いしますッ!!
 あたし、あの家に住んでいたいんですッ!!
 あの家から離れたくないんですッ!!
 お願いします、あの家を売らないで下さいッ!!!!」


 プライドも何もない。

 あたしはただ、頭を下げ続けた。


「藍架…ッ」

「…お兄さんのことは、聞いたよ」

「はっ?」


 宏樹さんの言葉に、春樹がぽかんとする。

 春樹には…言ってないんだ。


「藍架ちゃんの気持ちもわかる。
 けどね…」

「お願いします!!お願いします!!!!」


 溢れた涙がテーブルクロスにシミを作った。


「忘れないことは悪いことだとは思わない。
 でも縛られるのは駄目だ」



< 213 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop