ぼくらのうた
でもあたしは…なおにぃを忘れることなんて、できないっ。
「じゃあ家はうちで…」
その言葉に、立ち上がった。
嫌われてもいいよ、でもこれだけは譲れないの。
「お願いしますッ!!
あたし、あの家に住んでいたいんですッ!!
あの家から離れたくないんですッ!!
お願いします、あの家を売らないで下さいッ!!!!」
プライドも何もない。
あたしはただ、頭を下げ続けた。
「藍架…ッ」
「…お兄さんのことは、聞いたよ」
「はっ?」
宏樹さんの言葉に、春樹がぽかんとする。
春樹には…言ってないんだ。
「藍架ちゃんの気持ちもわかる。
けどね…」
「お願いします!!お願いします!!!!」
溢れた涙がテーブルクロスにシミを作った。
「忘れないことは悪いことだとは思わない。
でも縛られるのは駄目だ」