ぼくらのうた



 小さな深呼吸を繰り返す春樹。

 まだ、何かあるんだね…。


「母さんが家を出ていったあと…あるニュースが話題になった」


 カタカタと震える手。

 初めて見た、春樹の泣きそうな顔。

 あたしは安心させるように、春樹の手をぎゅっと握った。


「それは…女性のバラバラ殺人事件だった。
 場所は県外。その人は…ッ」


 ぎゅっと目を瞑る春樹。

 予測できて、まさかと思った。

 そんなこと…ないよね…?


「まさか…」

「…母さん、だったんだ…ッ」


 手のように震える声。

 その姿は、ちっちゃい子供みたいだった。

 春樹は今も、その過去に囚われているんだね…。


「俺が、もっと頑張れれば…ッ!
 そしたら離婚することも、母さんが死ぬこともなかったんだッ!!!!」



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