ぼくらのうた



 ―ドクンッ

 心臓が不吉な音を立てた。

 光の過去…なんて、この間正体を知ったばっかりなのに。

 そんなあたしに、知っていい権利がある?


「俺の、過去のこと。
 この間家に連れてったのも…この為だしな」

「…」


 あたしは、光のこと、何にも知らない。

 誕生日を祝いあったりしないし、得意科目も知らない。

 数学だけはやばいってのは、知ってるけど。


「始まりは…」

「…っ、待って!」


 光が口を開いたまま、あたしを見た。

 その眉間にはいつも通りシワが寄っていた。


「あたし…あたし、光のこと何にも知らない。
 なのに…知って、いいの…?」

「…確かにお前に、知らせる必要はないって思ってた。
 打ち明けたところで、解決するモノでもない」



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