【完】君に贈る歌



「謝ってほしいなんて頼んでない。俺の言った言葉に対して怒ってほしいわけでもない。・・・俺はもう子供じゃないんだ。これからのことは二人で決めて」




そう言い残し俺は家を出た。


行くあてもなく、だらだらとそこら辺をさまよう。




いつかはこうなると分かっていた。

母さんの浮気が父さんにばれて。
父さんが怒って。
母さんが泣いて。

どっちも自分が被害者ぶることは予想できていた。



母さんが浮気し始めてから俺は家族を諦めていて、いつも寂しい気持ちを学校で埋めていた。



学校に行けば俺を必要としてくれる人がいる。

それだけで十分だった。



もちろんそれは友達でも、恋人でも、俺を好いてくれる人誰でもよかった。


きっかけはたくさんあったと思う。

今の俺ができたのも、今までの道を歩んできたからこそだ。




綺麗事で済ませようとは思っていない。


俺はさやかを殺して、立花を傷つけた。

最低な野郎だ。




本当は圭介が立花と一緒になってくれて嬉しかった部分もある。

今の俺が本気で立花を幸せにできるのかと問われると少し不安だったから。



俺の過去を立花に話せるのだろうか。
誰にも話した事のない過去を。

そう思えば思うほど怖かった。




だから胸がどれだけ苦しくても、会いたくても、触れたくてもどうにもできない。




俺は全て・・・嘘つきだ。
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