【完】君に贈る歌
一度病室に行く道を間違えながらも、ようやくたどり着いた。
"立花桔梗"と書かれた病室を見つめながら、俺は大きく深呼吸をする。
落ち着いた後、俺は扉に手をかけゆっくりと開けた。
そこにいたのは長い黒髪の立花ではなく、髪が肩まで短くなった立花がいた。
窓の外を見つめる横顔はとても切なげだった。
俺はしばらく声をかけることもできずその場に立ち尽くすだけ。
第一声が出てこない。
声を発するだけで緊張する。
もう立花に会わないでいたのはどれくらいだろうか。
立花はそんな俺に気付いたのか俺の方を見て驚いていた。
そして急に大粒の涙を流し始める。
「えっ・・・ちょっなんで」
慌てて近くにあったティッシュを数枚取り、立花に差しだす。
それを見て立花は余計に泣き始めてしまった。
俺にはどうすることもできず、そんな立花を見ていることしかできないでいた。
「・・・」
泣きながらノートを枕の下から取り出し、何かを書き始める立花。
そしてすっと差し出されたノートを俺は遠慮がちにもらう。
『どうして来たの』
そう一言だけ書いてあった。