【完】君に贈る歌
俺は全てを話した。
俺が過去に歌で失恋したこと。
両親のこと。
ある一人の少女を死に追いやったこと。
立花の歌を悪魔だと思ったこと。
最初から傷つける為に立花と付き合ったこと。
圭介たちを裏切ったこと。
そして、立花が本気で好きだということ。
「・・・」
立花は顔をあげず、ずっと下を向いている。
始終驚くところや、ひどいところはあっただろうに一回も顔をあげることはなかった。
ましてや俺の顔なんて見るはずもない。
ただ体を震わせて下を向いていた。
「なぁ、立花」
「・・・」
「圭介ならお前を絶対に幸せにしてくれると思うんだ」
俺の言葉を聞いた時、今まで絶対にあげなかった顔をあげ、俺を見た。
立花の瞳は涙でいっぱいだ。
俺は大切な人をこんなにも泣かせてしまっている自分に嫌悪を抱いた。
でも、これは俺が決めた答え。
貫き通さなければならない。
「・・・最後に一つだけ。これは言うつもりなかったんだけど、12月24日は絶対にテレビを見てほしい。立花が出ようとしていた歌の素人コンテスト。・・・無理にとは言わない。見たくなかったら、俺の言葉は無視してくれていいから」
立花は何かを伝えたいらしく口をパクパクさせている。
だけど俺はノートを返そうとはしなかった。
「明日、退院なんだってな。・・・声、戻るといいな」
そう言い残して立花の病室を出た。
一緒にノートも持ってきてしまっていたが、気にせず俺は病院を後にした。