【完】君に贈る歌



「立花、今までありがとう」


どれほど時間が経っただろうか。


俺は抱えていたノートを公園のゴミ箱にためらいながらも捨てた。




これで俺はあいつへの想いをセーブする事ができる。

もちろんそれは俺の勝手な自己解決。



立花自身の心は晴れないだろう。

でも、圭介が傍にいる。
高橋が傍にいる。


俺がいなくてもあいつは立ち直れる。


長い人生の中のたった数秒を俺がもらってしまったにすぎない。





高橋の心だって圭介が立花を好きでいる限り、晴れる事はないだろう。


俺はそんな高橋の心までも無視しようとしている。




「俺は本当勝手だよな」




公園を出た後、家には帰らず近くの安いホテルに泊まった。


次の日の学校もサボった。

俺の携帯には高橋からの着信と圭介からの着信がたくさん入っていたが、それを見て電源を切った。





「もう、俺は一人でいい」


高橋には歌のたくさんの事を教えてもらったし、圭介とのモヤモヤも俺はなくなった。


もう思い残した事はない。




あとは俺自身が自分の作った歌を作り上げるだけ。

少し不安だが金ならある。



家に帰らなくても当分はカラオケ店とネットカフェ、一日二食分の金なら出せるだろう。


自分の通帳から金もおろせられるよう、鞄にも入れてある。




大丈夫だ。

俺なら、きっと。
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