【完】君に贈る歌
俺の作った曲が流れ始める。
それを聞いた審査員の人の目つきがかわった。
その表情を見て少し不安もあったが、俺はそれをかき消すように息を吸い込んだ。
のびのびと始まる俺の歌。
メロディと絡みつく声。
俺自身が歌っていてとても気持ち良かった。
緊張はしていないが、俺は目を閉じて立花を想いながら歌う。
すると、俺だ私だと言わんばかりに歌詞が浮かんでくる。
それを綺麗に自分の作った曲に合わせて歌っていった。
「~♪」
気付くと曲は終わり、俺の歌も終わっていた。
目の前の審査員四人はきっと思った事、感じた事を手前の紙に書くのだろうが何故か俺の方をずっと見て書いていた様子がない。
「あの、終わりました」
俺がそう言うと、慌ててその四人は何かを紙に書き始めすぐに手を止め俺に拍手をしてくる。
「合格だ」
「・・・ありがとうございます!」
心の中で何度もガッツポーズをする。
ようやく第一関門をクリアしたようなものだ。
「一つ、聞かせてほしい。この曲と歌詞は君が作ったのか?」
「はい」
「ほう・・・」
「それだけだ」と審査員に言われ、俺は頭を下げてから部屋を出た。
受付で合格したと伝え、本番の日についてのことを事細かく教えてもらった。
スタジオを出た俺は
寒いがかすかに爽やかな風を受け大きな伸びをした。