【完】君に贈る歌
人気の少ない特別教室。
橘君や小沢君、桔梗と初めて出会ったと言ってもいい音楽室に来た。
「本当はこんなことしたくなかったんだけど、翔太の事調べてみたんだ」
「・・・え?」
「昔のこととか、色々」
「い、いつの間に。何もしてないかと思ってた」
「んな訳ねぇだろ。こんなにも学校休んで、音沙汰ないとか異常だと思ったんだよ」
「・・・うん」
「それに、親友のことなんだから」
小沢君のその一言にあたしはなんだか嬉しくなった。
うん、こうでなくっちゃ。
「で、調べたって言っても中学の頃の同級生に話聞いただけなんだけどな」
「ちょっと待って?まずなんで橘君の過去なんて調べたの?いなくなった事と何か関係でもあるの?」
「・・・桔梗の日記を見て」
「桔梗の日記を!?見ちゃ駄目でしょ!プライバシーだよ?」
「んなこと知ってるよ。知ってるけど見たんだ俺は」
「・・・」
「桔梗と俺は付き合ってる。それは間違いねぇ。・・・でも、遠いんだよ。隣にいるはずなのに、誰よりも近いはずなのに。何かが俺と桔梗の間に挟まってるんだ」
「それは」
「翔太だよ」
「うん・・・」
「簡潔に言うと、桔梗の本音が日記には書いてあるんじゃねぇかって思って」
「そっか・・・。うん、それでなんて書いてあったの?」
「翔太の過去がたくさん書かれてた。それと、桔梗が退院する前の日に翔太は病室に来たらしい」